写真右側方面に吉野川があり、上流側から下流向き(北向き)に撮影した写真である。街道をはさんで2棟の建物があるが、宿泊室はすべて左側(山側)の棟にあり、右側(川側)は厨房や経営者の住宅となっている。
山側の
客室棟は急傾斜地の建築であり、街道に面して玄関のある1階は建築全体から見ると地下階の位置付けとなる。この1階部分は外観・内部ともにかなり改装されていて、街道から向かって中央に
玄関、その右側に
応接室、左側に
浴室がある。玄関を入って正面の
階段を上がると2階の廊下をはさんで
中庭がひろがり、この2階が実質的には地上1階である。
客室は基本的には8畳または6畳の二間続きで1組である。建物の2階部分は中庭を囲むようにコの字型をなしている(
航空写真)。コの右辺を街道側とすれば、街道に面した右辺に
5・6号室および
7・8号室の2組、コの上辺に
20・21号室、下辺には8畳一間の12号室がある。2階の
洗面所とトイレ(
洋式1・
和式2・
朝顔2)は共同である。和式は汲み取りで、紙もロールではなく平判とするなど芸が細かい。堆肥にするためにはロールペーパーは不都合なのかもしれない。
2階12号室の上には3階があり、
鶴・亀の二間続き(
バス・トイレ付)がある。3階とはいっても山側は
地上レベルになっている。この部分の建築年代は他より新しいようだ。
手前が20号室(6畳)、奥(山側)が21号室(8畳)。中庭に面した南向きの部屋である。
夕食は21号室でいただいた。朝日館だけあって夕食で提供されるビールはアサヒビールで、旅館の
表看板や館内の
鏡にもアサヒビールのロゴが入っている。
布団は20号室に敷いていただく。
朝食については客室ではなく1階の応接間でいただいた。
朝日館の魅力の一つは廊下とそのガラス戸の美しさであろう。廊下というよりは広縁というべきかもしれないが、館内の廊下は昔そのままに仕切りなどなく全てがつながっており、たとえば
7・8号室の中庭側の廊下は他の部屋やトイレなどに行く客も通行する。それに対して20・21号室の中庭側の廊下は行き止まりになっていて、他の客が入ってくる恐れはほとんどないから、部屋の障子をあけ放って中庭をゆっくり眺めるには
21号室が最適と思われる。ただし、5~8号室であっても
街道に面した側の廊下には部屋の前まで他人が入り込むことはないであろう。なお、5・6号室の山側は
廊下を挟んで20号室に向かい合うため中庭の眺望はない。
吉野川左岸の柏木集落から右岸の神之谷(こうのたに)方面へ渡る
つり橋からみた柏木集落。朝日館はここから左(上流側)へ200mほどの所にあり、この写真の画角からははずれている。
葛生賢監督の映画「吉野葛」で津村とお佐和が下駄を鳴らしながらつり橋を渡るラストシーンがここで撮影されたそうだが、谷崎潤一郎の原作ではさらに上流の入之波(しおのは)にかかるつり橋となっていて、ここではないのである。