郷思館の館内西端は細長い土間の調理場となっており、南西角には南に面して勝手口がある。勝手口の隣には宿泊客が使用する
潜り戸のある玄関、および東寄りには式台を有するかつての来客用玄関があり、南正面には計3つの入り口を有している。
左奥に見えるのは
西隣の民家の茅葺屋根。この民家は規模こそ郷思館よりやや小さいものの、住宅であったころの郷思館の様子を彷彿とさせる。
玄関から上がった板の間。中央には大きな置き炉があり炭火をおこしていた。
夕食はこの置き炉でいただいた。左手のガラス戸の外が土間の厨房で、夕食と朝食はここで調理される。専任の料理長と女将さんが調理にあたり、食事の質は大変に高い。
暖炉横のガラス戸の向こうにはトイレ(
洋式および
男性用)、
洗面所、
浴室などがあり、
客室Eの入り口もこちらになる。レンガの暖炉はフェイクであって、茅葺屋根に通じるような煙突は存在しない。おそらく暖炉まわりの壁や引き戸はもともとは無く、板の間が奥まで続いていて、暖炉の位置には大きな囲炉裏があったのではあるまいか。そして、その先の現在浴室・洗面所・トイレがある北側スペースは勝手口から続く土間になっていて、竈や流しがあったのではあるまいか。
板の間Aの隣の大変に広い居間であり、部屋の南よりには
テーブルと椅子のセットが置いてある。このテーブルでは到着時に抹茶をいただける。
朝食もこのテーブルでいただいた。
この部屋のなかほどの畳にには小さな
囲炉裏が切ってあり、やはり炭火をおこしている。囲炉裏の暖房効果はほとんどあるまいと思うが、館内にはエアコンのほかに大きなガスストーブが何台かあり、12月という冬の季節であったが寒さの心配は無用であった。
奥座敷である。写真右側の客室Cには来客用の玄関がついていて、表から直接入れる構造になっている。来客は玄関からまず客室Cにあがり、ついで奥の客室Dに進んで
床の間の前に招じられたことであろう。二つの部屋の間の欄間はケヤキの一枚板の透かし彫りになっており、また、付書院の明り取りには
本間家の屋号紋が透かし彫りになっている。
我々が宿泊した時には客室Cに布団を敷いていただき
寝室として利用した。この二間は東に面しており、
広縁の外には池や十三重石塔のある
庭園が眺められる。広縁の北端には
手洗い場と
トイレがある。
なお、客室Cの南東側、つまり屋敷の
南東角部には床の間付きの客室F(6畳)があるはずなのだが、その部屋を見た記憶がないのである。館内が広すぎて当日は気が付かなったものと思われる。
唯一
屋敷の北側に面した北向きの客室である。もともとは寝室であったのだろう。他の客室からの独立性が高く、板の間Aから他の客室を通らずに入ることができ、さらに北側広縁の奥にはこの部屋専用のトイレがある。