井出野屋 長野県佐久市・中山道望月宿 2017年9月訪問

 JR佐久平駅から立科町役場前行きの千曲バスに乗り、30分ほどでバスは中山道望月宿へ入る。望月バスターミナルの次の支所入口バス停で下車して少し戻った街道沿いに井出野屋旅館はある。中山道は鹿曲川(かくまがわ)沿いに通っていて、井出野屋旅館も川沿いの低地に位置し、旅館の背後には河岸段丘崖がある。現在の望月の町の中心は街道沿いの宿場というよりは段丘の上のほうにある。広重の「木曽海道六拾九次之内 望月」を見ても街道は段丘上を通っているように見えるがどうであろうか。旅館背後の高台には場違いに新しく立派な望月町役場(現佐久市望月支所)が見え、役場を過ぎて徒歩数分のところにスーパー、酒屋、書店、銀行、タクシー営業所などがあるがコンビニはないので、買い物は早めに済ませる必要がある。
 中山道には伝統的な建築が多く残っている。望月宿でも古い民家旅籠がよく目につくなかで、井出野屋旅館の3階建ての街道に面した外観はむしろモダンな印象を与え、映画「犬神家の一族」の撮影に使われた時の「那須ホテル」の名称のほうが似つかわしいとさえ感じさせられる。玄関を入ると館内の中央には広い廊下があり、左右に部屋が並ぶ。この配置は2・3階にも共通であり、大正から昭和初期の旅館によくみられる構造である。
 2023年5月に廃業。

<Wayback Machine> <楽天トラベル> <日本ボロ宿紀行> <TAMAISM> <Google地図> <地理院地図>

南側から見た井出野屋旅館
 井出野屋旅館の背後の段丘の上に建つ望月町役場の駐車場横から撮影したものである。奥に見える山のふもとには鹿曲川が右から左の千曲川方面へ流れている。
 旅館の3階建ての母屋と土蔵の間の中庭であったと思われるところには増築がたてこんでいて、母屋1階および2・3階の手前側も含めてかなりの数の関係者が居住しているように感じられる。

2階の廊下
 街道側(玄関上)から奥を見たところ。写真中央に見える階段手摺の右手前が十一番の部屋で、そのさらに右手前が十二番、十二番の向かい(写真左端)が十三番、その奥(十一番向かい)が十四番の部屋。十二番と十三番は窓際の小さな廊下を挟んで中山道に面している。
 廊下の奥の非常灯が見える突き当り左に曲がるとマリリンの写真があり、さらに奥にはトイレ和式洋式男性用手洗)がある。右奥の階段わきの部屋は居住場所として使われているようである。

2階の十三番の部屋
 客室として最もよく使われる部屋のようである。つづきの十四番が寝室として使われ、十三番が6畳、十四番が8畳で合計14畳となる。十四番とその隣(十五番?)の間にはもともとは襖が立てられていたのであろうが、現在はボードで区切られている。夕食朝食は十一番でいただいた。
 写真左端には十二番の障子、右側の窓の外には街道を挟んで向かいにある旅籠山城屋嘉左衛門が見える。

3階の廊下
 2階の廊下と同様のつくりであるが、鴨居の額縁などがない分、さっぱりとした印象である。もとは1~2階の階段と同様に2~3階にも向かい合わせに2本の階段があったと思われるが、現在は手前の階段は撤去されている。2階と同様に右奥階段わきの部屋は居住場所として使われているようであった 。

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