木造モルタル塗りの洋館の1階は
ラウンジになっており、洋館の宿泊室は2階の「
らんの間」だけである。写真手前2階の角張った出窓のある部屋と続きの部屋の2部屋が
「らんの間」のリビングとなっている。その奥にある丸い出窓のある部分の部屋は、面積は小さいと思われるが
出入口は大きく、大変に魅力的であるのだが閉鎖されていて使われていない。丸い出窓の部屋と「らんの間」の間の
壁にドアを設けることは構造的には容易と思われ、丸い出窓の部屋が利用されていないのは少し残念である。写真手前の角張った出窓の右に見える2つの小さな
窓の部分は
浴室・
トイレになっている。この浴室・トイレにはその奥にある寝室から入るようになっている。
寝室には窓がないが、リビングと一体感があり、窮屈ではない。
夕食はリビングでいただくことができる。
2階の「らんの間」には西日が当たり温室効果が高い。現在は空調があるから問題ないが、昔は夏季の使用には適さなかっただろうと思われる。
和館部分はかなり改築されていて、登録有形文化財に登録されているのは写真奥の洋館部分だけである。特に和館1階は、もともと2階と同じ建ち幅であったところが大幅に増築・拡張され、室内(大広間)も完全に改装されて旧来の面影は残っていないが、ここからの
庭の眺めは昔のままであろう。朝食はこの大広間でいただいた。
一方、和館の2階は「
まつの間」であり、やはり窓まわりはかなり改変を受けているものの、内部の和室は当時の状態をよくとどめているようである。
旧村田邸の中で宿泊可能なのは洋館「らんの間」と和館「まつの間」の2部屋だけで、いずれも
2階で隣り合っている。「らんの間」の寝室には「まつの間」での子供の声などがよく伝わるが、むしろホテルらしからぬ住宅旧来の風情を醸し出していて微笑ましい。そのときに「まつの間」に宿泊していた家族連れは長期の海水浴客であるらしく、翌日も朝から海岸へ出かけていた。
みごとな松の木はホテル開業当時の写真にもあり、おそらくは村田邸建築当初からのものであろう。写真左下は和館1階増築部分の屋根。芝生の庭の左には
浴場のある建物があり、浴場の右脇には小さな休息所(庭に面したガラス戸部分)が設けられていてビール等の自動販売機がある。そのさらに右の1階が庭付き和室、2階が和洋室であろう。浴場の背後の2階建ては一般的な
客室棟。
1枚目の洋館庭園側の写真の裏側増築部分にある玄関。玄関を入ると
フロント・
ロビーがあり、その奥に旧村田邸1階の
ラウンジが続いている
三角屋根が洋館で、切妻や破風板の先には
モルタル装飾がある(庭園側では切妻の装飾は失われている)。この写真では玄関の屋根に隠れて見えないが、洋館2階には
窓がある。洋館1階の外観は全く失われているが、古い写真を見ると洋館に玄関が設けられていたことがわかる。また、玄関左の建物はホテルの事務所や調理場あるいは経営者住宅などであろうが、もともとは村田邸和館から連続する1階建ての建物があった部分と思われる。