ホテルニドム 北海道苫小牧市 2024年1月訪問

 いかにも北海道らしい、曲がりくねった川や湿原に囲まれた広大な森の中にコテージが散在する。周辺には、ゴルフ場のほかには特別な観光地などないが、新千歳空港からほど近く、札幌市内へのビジネス用途にも便利である。道外から北海道を訪れる際には、その入口・出口としてここでの一泊あるいは二泊を加えれば、大変に贅沢で余裕のある旅程になるだろう。
 このホテル開業直前の1990年6月20日から7月9日までの20日間、最晩年のレナード・バーンスタイン氏滞在して「Ni−dom means peace and free−dom♪♪で始まる「Beginning of Hymn to Nidom」 の譜を残した。氏はほとんど寝たきり状態でここに到着したが、3日後には精気を取り戻して「It brought me alive」(ニドムは私を生きかえらせた)と述べたと言われている。
<ホテル ニドム> <Wikipedia> <楽天トラベル> <Google地図> <地理院地図>

コテージ(536棟)
 「リスの森」と呼ばれる区域には25棟のコテージがある。ホテル本館のフロントから各コテージまでは数百メートルの距離があり、車で送迎してもらえるが、コテージの玄関手前数十メートルは歩く必要があり、吹雪のときはちょっとした冒険気分を味わうことができる。穏やかな気候ならば荷物だけ配送してもらって空身で森を散策しながらコテージに到着すれば、それもまた素晴らしい思い出となるだろう。
 各コテージは、構造・間取り・内装から調度品にいたるまで、どの棟でもほとんど同一だと思われる。各コテージは小さな湖(トムトム湖)に面した南西向きの斜面に立地しており、山側の2階に玄関がある。2階はフィンランド産のシルバーパイン(立ち枯れた松材)を用いたログハウスである。一方、1階はおそらく鉄筋コンクリート造で、外観は石版貼り、内面は木板貼りとなっている。

2階のリビング
 玄関を入ると、右にキッチンと1階に下りる螺旋階段があり、奥がリビングとなる。リビングの左側にはソファなどがしつらえられた空間があり、また、リビングの右側には6名が着席できるダイニングテーブルがある。正面ドアの外にはトムトム湖に面したベランダがある。
 写真中央の椅子は、薪ストーブの前に座るために移動したもの。薪は室内に十分に用意されており、ベランダにもストックがあった。薪は周辺の森の手入れで出たものらしく若干湿っていた。私はこのような焚き付けにはそれなりの経験と技術を有すると自負しているのだが、太い薪には本格的に火をいれることができなかったのは遺憾であった。
 このようなコテージに滞在するのであれば食事はルームサービスとしたいものだ。私の場合、夜は食事を済ませてからの遅い到着(いわゆる片泊まり)でウェルカムプレートだけをテーブルでいただいたが、朝食はデリバリーしていただいた。その内容はともかくとしても、悪天候の場合などは本館のレストランに出向かなくてもコテージで部屋着のままでゆっくりと食事ができるのはありがたい。聞けばこの日の宿泊客はホテル全体で私1人だけだったそうだ。オフシーズンにも良好なサービスを提供し続けていることに敬意を表したい。

1階の寝室
 階段を降りると、左右に2組の手洗いがある。玄関の階下に当たる手洗いにはクローゼット等が配置され、またキッチンの階下に当たる手洗いにはバスタブが付属する。リビングの階下は2室の寝室となっていて、左右対称の誂えである。各室2台、合計4台のベッドが備えられていて、家族連れには最適だ。寝室奥のドアからは1階のテラスに出ることができ、やはりトムトム湖が望まれる。2階ベランダを支える支柱は1階テラスにある高さ1mほどもある土台で受けられている。積雪への対処かもしれないが、この土台はやや無骨な印象を与える。

ニドムとは、アイヌ語で「豊かな森」という意味。
その言葉どおり豊かで緑深い森と、その中に点在する湖。
そしてコテージ、石の教会と木の教会。
渡辺淳一一度は泊まりたい日本の宿」(集英社, 2011)
バーンスタイン(以下LB;Leonard Bernstein)はニドムの森の空気の中でよみがえり、(中略)ここの雰囲気と空気がよほど身体に良く、元気になれたのが嬉しかったのか、LBは音楽のテーマが思い浮かんで「森の歌」と言うタイトルのテーマを4小節作り「来年また来て全曲を完成させるから」と置いて帰りました。この4小節はLBの絶筆になりました。
竹津宜男バーンスタインの宿」(PMFを応援する会) 「森の歌」:おそらく先述の「Beginning of Hymn to Nidom」と同一のものを指すのであろう。
日本の佳宿