酸ヶ湯温泉 青森県・八甲田山 2004年4月・2019年3月訪問

 全国的に最も有名な温泉のひとつだろう。日本有数の豪雪地帯にあり、アメダスの積雪深ランキングでは酸ヶ湯観測点がダントツ全国1番となっていることが多い。それでありながら、1982年以降は青森市内から通年除雪されて自動車でアクセスが可能な観光地であり、また山中の一軒宿ではあるが多くの木造の宿泊棟を擁して平面規模が大きく(航空写真)、長期滞在の湯治客も多いので、いつでもちょっとしたひとつの温泉街のようなにぎわいをみせている。典型的な「日本の温泉」を手軽に体験したいならばお勧めである。送迎バスが青森駅から1日2便あるほか、青森駅と新青森駅からはJRの路線バス(みずうみ号)も運行している。

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酸ケ湯温泉旅館 俯瞰
 ゴールデンウイークの酸ケ湯温泉旅館。この年(2004)の積雪量はほぼ平年並みか
 八甲田山域では山岳スキーが盛んである。酸ケ湯温泉へは八甲田ロープウェイ山頂駅から特段の登攀や針路見極めの難所もなく(天候・視界がよければ)容易にすべり込むことができる。ゴールデンウイーク期間中は八甲田山東麓の田代高原(箒場岱)から南麓の酸ヶ湯温泉までの間を北まわりでシャトルバスが運行するから、北八甲田北斜面を滑るのも楽しい。高田大岳(1,552m)の東大斜面谷地温泉へ滑り降りたり、南八甲田の乗鞍岳・赤岳方面から猿倉温泉へ降りた場合には、JRの路線バス(みずうみ号)で酸ケ湯へ戻れる。
 写真右上端は南八甲田の主峰である櫛ヶ峯(1,517m)。南八甲田でのスキーにはある程度の経験と万一に備える装備が求められるだろう。櫛ヶ峯山頂から横岳を経て城ヶ倉大橋へ下るルートは積雪期のスキーでのみ可能であると思われる。
 南八甲田の山並みのふもと、写真の中央やや上側には、酸ケ湯温泉旅館と同系列の経営である八甲田ホテルの建物群が横長に連なっているのがみえる。

旅館棟「イ棟」
「イ棟」は「いとう」ではなく「いむね」と読むらしい。酸ケ湯温泉旅館には7棟の宿泊棟があるが「イ棟」のほかは1, 2, 3, (4はなくて)5, 6, 7号館と番号が振られている。もとはイ, ロ, ハ…だったのが「イ」だけ残っているのかもしれない。
 右側の建物は女性専用の「玉の湯」、背後の山頂は北八甲田の主峰である大岳(1,584m)。

イ棟の客室
 イ棟2階南側中央部の「たも」の部屋。8畳に広縁付きである。テレビが置いてある床の間には陸奥らしい掛け軸もかけてある。
 ウェブなどによく写真で紹介されている書院のある床の間付き10畳+6畳の特別室はイ棟2階南東角の「しらかば」という部屋であろう。北東角の「えんじゅ」も同じ間取りになっている。これらの部屋は、もしかすると山に近すぎて大岳の展望はないのかもしれないが、酸ケ湯温泉では最上の奥座敷であろうから、ぜひいつか利用してみたいと思っている。

旅館中心部
 上の写真のイ棟2階「たも」の窓から右方向を見たところである。ちなみに上の2枚目の写真は、この写真下中央の渡り廊下の窓から撮影したものである。
 左の建物が7号館で、その右の屋根の排気棟から盛んに湯気を吐いているのが有名な千人風呂である。右端に少し見える屋根がフロントロビーのある建物、千人風呂の向こうは、旅館正面の駐車場に面して土産物店や食堂があって観光客がひしめく建物である。

湯治棟6号館
 2号館~6号館は湯治棟である。右に見えているのは自炊のための炊事場。各部屋の入り口の上に電力計が設置されているのも、いかにも長期滞在に対応した湯治場らしい。

売店
 1号館にあった食品売店。2019年に訪れた時には改修工事のために閉店していた。駐車場に面した売店は観光客相手の土産物店だから、この売店が無くては長期滞在の湯治には不便だろう。とはいえ、車で30分も下れば青森市内のコンビニへ行けるのだから、自家用車の利用者にとってはあまり問題ないのかもしれない。
 1号館は洋室も備えた旅館棟として改装予定だそうだ。売店は復活するのだろうか。

日本の佳宿